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ジャグラ愛知50周年記念「起業家座談会」      

 
(2005.10.22)
 

 〜〜 今年はジャグラ愛知の創立50周年にあたり、会員の中の起業家グループの方々の座談会を企画しました。50周年記念事業のコンセプトの一つに「温故知新」というのがありますが、皆さんは古い時もご存知ですし、今、一番活躍中で、これから会社をどうしていくか、又、業界をどうするかといった位置にたっていらっしゃると思いますので、最も温故知新のテーマにふさわしいのではないかと思っております。今日は夢のある積極的なお話をお聞きしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。



創業のきっかけと苦労したこと


 〜〜 まず、創業はいつですか?それと現状を…
 近藤 脱サラして独立したのが平成元年5月1日。当時45歳でした。結婚式専門の印刷で、現在16人。17年6月期決算で売り上げ1億2,500万円。うち50%が人件費と福利厚生費です。内製化を進めて加工高70%で印刷屋というよりサービス業だと思っています。
 〜〜 きっかけは?
 近藤 今の会社は平成元年5月1日のスタートなんですが、その前に4年回り道しています。独立のきっかけは、それまで結婚式という特殊な印刷専門で、全国シェア12%を持っている会社の名古屋営業所長をやってまして、すごく儲かってたんです。しかし、営業成績いいのに、その割りに社員が報われていない。名古屋という地域性を無視して、東京本部で全国ネットの企画を考えて押し付けるわけです。そこで、お客さんの個人ニーズ、すなわち、新郎新婦の我儘やこだわりを叶えるのが仕事と思う私の考えと、会社の全国レベルのことをやれっていう押し付けや、経費節約の締め付けをして利益追求する会社のやり方との食い違いがあって、これは自分でやるしかないかなと考え、たまたま応援してくれる人もいて、3人でやり始めたんです。だけど、はじめのうちはいいんですが、3人でやるっていうことは、儲かりだしたら具合が悪くなり、私がひとり飛び出して、平成元年に再スタートしたという経緯です。4年間回り道というか、勉強期間だったと思っています。
 〜〜 順調に軌道に乗りました?
 近藤 最初は、営業だけでそれこそタイプ1台、中古で買ってきて、女房に打たせて、ブローカーみたいなものですね。自前のリョウビの印刷機導入まで5年かかりました。現在その時の2台で年間1億円分印刷しています。知っている人から見れば、うそっ!ていう量をこなしているんです。順調に売り上げはのびましたが、10年目に一大転機がありました。
 
10年目に一大転機

〜〜 それは何ですか?
 近藤 仕事が多すぎて…。名古屋の年間結婚組数が約15,000組あります。わが社で処理できる仕事量は2,000組なんです。結婚式の仕事は、シーズン、月によって、上下の波がありすぎるんです。一番のピークが、平成12年で、2,000組を超えまして、夜10時とか11時まで残業しないと追いつかない、休日出勤もやらないとこなせない。このままだと、うちの会社は仕事多すぎ倒産で、皆辞めちゃう、身体壊しちゃう。で、一念発起して、平成11年、当時の取引先33社のうち、上位7社だけに絞ったら、翌年売り上げが120%伸びたんです。恐ろしいでしょう。
 〜〜 どういう訳でしょう。
 近藤 その1年半前、名古屋駅に大きなホテルができて、そこを何が何でも取りたいと。今でもパンク寸前だけど、あそこが500組、どんときたら…。とにかく700組くらい減らさなあかんと削ったわけです。上位7社とNO.1のホテルを加え8社で、13年6月期決算は1億2,900万円でした。
 〜〜 ところで、会社の規模を拡大するとか、同業者に回すとかは、考えなかったですか?
 近藤 分相応というと消極的に聞こえるかも知れませんが、高品質を維持することを考えていました。レベルダウンが怖かったですね。老舗の鰻屋が、店を拡げてリニューアルしたとたん客足が落ちたという話も聞きますしね。
 〜〜 なるほど。
 近藤 それで、ここ4,5年、私が考えているのは、一番大事にするのは社員だ、2番目にお客様にしようと。お客様というのは、ホテルじゃない。結婚式をするカップルだと。3番目がホテル。いろいろな提案はしますが、ゴルフとか、一杯飲むとか、いわゆる一般的な営業攻勢はしないと決めています。
 〜〜 それだけ、きちっとしたエンドユーザーへのノウハウをお持ちなわけですね。

技術革新など環境への対応

 〜〜 さて、この業界はタイプ印刷、タイプオフセット、写植、電算植字と移ってきて、その後デジタル化で、今のパソコンを使ったものに変わってくるんですが、技術的に目まぐるしく進展してきた中でご苦労があったと思うんですが、どうでした?
 近藤 最初は電動タイプでした。そうしたら、1年もたたないうちにワープロが出てきたんです。そのうちにパソコンが出て、これでやったら、3倍ぐらい速いんですよね。こんな便利なものなんで早く言ってくれんかと。(笑)その後、どんどん新しいのが出てきますよね。今、パソコンが12台あるんですが、1台ずつ増やしていくもんですから、文字フォント、処理スピードなど日進月歩のあおりをうけています。
 〜〜 ワープロは敵か味方かというような論争が昔ありましたが、もう完全に味方で、便利な道具だったんですね。

苦労話、嬉しかった話、いい話

 〜〜 ここまで来るのに大変な苦労があったと思いますが、それでもやってよかった、これは儲かった、この時期はよかったということは、きっと、おありだと思いますが…。
 近藤 苦労話をする歳にはまだまだだと思っています。もっとも自分では苦労したとは思ってないんですけど。印刷業界の嫌な話ならあります。
 〜〜 はい、どうぞ。
 近藤 たとえば、結婚式なんで、封筒をつかうんですよ。今は2,000組掛ける約60人分で、年間12万袋です。スタート時買いに行ったら、前にいた会社が封筒屋に言いつけて邪魔するわけです。近藤と取引したら、おれのところは取引やめるぞ、みたいな話で。紙屋もそうだし、今なくなったエーエムって昔の機械、そこもやっぱり前の会社からプレッシャーかかってるんです。だから嫌な世界ですねと。
 〜〜 その会社はどうなりましたか?
 近藤 私が抜けた後、何年かして、自主廃業しました。大手会社の方は、昨年社長が2回交代し、さらに今年も社長交代があり、外資の投資会社、商社、証券会社により経営再建中です。
 〜〜 取引先はどうですか?
 近藤 ホテルも、結婚式場も同じなんですよ。このデザインは他社には持っていくなとか、オリジナルデザインを作れとか、要するに、うちに来るんだったらあっちに行くな。あっちに行くんだったら取引やめるぞ。ライバル関係のところは一杯ありましたから。だから、そういう嫌がらせとはいいませんが、囲い込みみたいなのはありましたね。
 〜〜 こちらから言えば、理不尽な嫌らしいことだけど、向こうは向こうで言いたいことがあるかもしれないけれど、難しいものですね。
 近藤 それはそうですね。と今なら、余裕もって言えますが…この16年間で取引先の8社が、倒産、自主廃業、業種転換していますが、今のところ焦げ付きはありません。危険信号を感じたら自分から撤退するようにしています。はじめの頃、義理人情を考えてふんぎりがつかなかったんですが…。今では取引前に私なりの基準で判断しています。
 〜〜 いい話は?
 近藤 順調に仕事を増やしてきたことが、いいことですかね。仕事を選択する苦労もしてますが。いい話ですか。ホテルのディナーショーやビール祭りなど、できるだけ社員と一緒に行くようにしています。社員旅行とか、ボーリング大会とか食事会など、社員にとってはいい話だと思っています。

経営理念、信条

 〜〜 会社を運営していく経営理念、信条といったものを、お聞かせ願えませんか。
 近藤 「社員第一主義、顧客第二主義」(伊集院憲弘著、毎日新聞社刊)に共鳴、共感しています。印刷屋にとって得意先のホテル・結婚式場は3番目です。社員が満足していなければ、顧客(新郎・新婦)に満足してもらえる招待状や席次表ができるはずがないという発想です。
 〜〜 面白い考え方ですね。
 近藤 社員も大事ですし、家族も大事だと思っています。特に女房には創業当時ムチャクチャでしたから、今になって、女房ヨイショ作戦進行中です。週1回ダンスレッスン、月1回ホテルのディナーショーとかダンスパーティ、結婚記念日とか誕生日にダンス旅行。なぜダンスかというと2人で行く口実ができるから。同年代の友人たちが奥さんを誘っても「いまさら夫婦で温泉なんて…」「二人だけでは面白くない」という返事が多いんですね。ゴルフも最近はじめましたが、口を出すとケンカになるので、もう少ししてから「ガマン、ガマン」と念じながら一緒にラウンドするつもりです。

後継者問題

 〜〜 さて、最後の後継者問題に入っていきます。この商売やってみて、よかったのか、そうでなかったのか。それから後継者はいらっしゃるのか。そしてまた、後継者に、生き方など何をバトンタッチしていくのか。
 近藤 何年か前までは、60歳で勇退して息子に譲るつもりで「他人の飯を喰って来い」と言ってたんですが、他人の飯のほうがおいしいらしく、本人にその意思がないというので、あきらめました。
 〜〜 もったいない話ですね。
 近藤 60歳すぎて考えが変わりました。会社は私一人のものじゃない。世のため人のため存続することが正義なら、誰が社長でも会社は残っていく。それは顧客(新郎・新婦)が決めることだと悟りはじめました。16年社長業を楽しみましたので、あと4年で方向づけだけして、社長業20年、65歳で私は勇退します。新郎新婦があんな会社要らんと言えばつぶせばいいし、なくしちゃえばいい。多分、恐らく、絶対必要としてくれるから、それを動かすのは、もう、お前たちが自分たちでやれやという気持ちです。
 〜〜 なかなか格好いい話ですね。
 近藤 親子の引継ぎの成功例よりも失敗例のほうがいっぱいありますし、後継者難を理由に老害をまきちらしたり、社長から会長になったのに、出戻って会長・社長兼務になったりとか、いい話は聞こえてきませんから。反面教師といいますか、そうならないようにと考えています。M&Aとか株式譲渡、売却など選択肢はありますが、決めるのは自分ではないと心しています。
 〜〜誰にバトンタッチするかの次は、何をですが…
 近藤 “繁栄の方程式”ですね。10年間対前年比10〜15%増の数字が残せたイキサツと踊り場での小休止の勇気。それと、人との出会いの大切さですね。
〜〜詳しく聞きたいですね。
 近藤 はじめはNO!と言わない会社でスタートしました。その時は早くNO!と言える会社にしたいと思っていました。今は、NO!ではなく、代案を提案できる会社にしたいと思っています。要は、新郎新婦(エンドユーザー)の好み(ニーズ)は常に変化している、それをどうキャッチするかですね。

組合に期待すること

 〜〜 さて、ジャグラ愛知は現在92社です。10年前も92社で変わっておりません。会費をお預かりしている以上、何とかメリットのあることを提供したいと思ってやっているんですが、アドバイスといいますか、ご要望をいただけたらありがたいと思います。
 近藤 ちょっと話がずれるんですが、知多市印刷組合で、中部空港セントレアがオープンした時に、そこの中にある有名なレストランへ印刷組合6社の従業員72人で食事にいったんですが、皆に喜んでもらえました。話題性があって、地元で、ほぼ全員参加が受けたんだと思います。ジャグラもそんな企画を何か考えられないかと思いますね。時間も金もかかりますが…。期待としては、印刷の機械を購入する時の、機種選定のための的確な情報で、業者の裏のない本音の部分を教えてもらえるネットワークができればいいな、と思うんです。
 〜〜要望はないですか?
 近藤 ジャグラから会報、ホームページ、メールなど、いろいろな情報がきますよね。言っちゃいかんけど、つまらんことばかりですよ。だから、読めるもの、読んでためになるものをお願いします。たとえば、中日新聞に載っている印刷関係の記事のダイジェスト版とか。
 〜〜 役に立つものをですね。
 近藤 ええ、だからたまたま見逃していて、あっ、そういえばそうだったと新聞で探せばいいんです。事務局は大変でしょうけど、そういうのもあっていいかなという気もするんですよね。

 〜〜 ありがとうございました。起業家としての苦労もたくさんあったとお聞きしました。でも、一番うれしいのは、やってきて面白かったな、よかったな、ということをお聞きできたことです。ますますのご活躍をお祈りします。今日は、本当にありがとうございました。

                          ジャグラ愛知50周年記念誌(2005.10.22)
                                 -関係分のみ抜粋-




 誌面の都合で載らなかった話や、座談会が終わった後のホンネなど続編です。

 〜〜皆さんは、現在は印刷関係ですが、印刷とのかかわりとか、そもそもなんで印刷なのかお聞かせください。
 近藤 たまたまですね。12年間勤めた新聞社からの転職先がたまたま印刷屋だったというだけですね。その会社に6年いただけで、何の繋がりもなく、独立しちゃったという感じで、無謀というか、乱暴な話ですね。

 〜〜その新聞社も、たまたまですか?
 近藤 いいえ、子どもの頃の夢を、実現させたものです。高校時代にテレビ番組の「事件記者」とか「七人の刑事」を見て、新聞記者にあこがれてました。大学受験の時には、新聞学科を選んでいましたから。クラスに150人いて、新聞社に入ったのは30人くらいでした。

 〜〜趣味の話を…
 近藤 手品は高校時代からはじめて40年以上になります。当時、旺文社の「蛍雪時代」で志望校選びの時、新聞学科と手品クラブを探していました。両方あったのは、関西では、わが関西大学だけでした。(笑)

 〜〜40年続けるというのはすごいことですよね。
 近藤 サラリーマン時代は、仕事に追われて、出世すれば余裕ができるかと思っていたんですが、ダメでした。いっそ社長になれば自由になるかと、思ったんですが、逆でした。新人の頃が、一番時間がありました。近くの公民館で手品教室をやっていたんですが、社長になって2年たらずで休講したくらいです。

 〜〜みんなの前で、おやりになることは…
 近藤 ありますよ。ホテルのディナーショーとか、老人会とか、子ども会とかいろいろです。

 〜〜プロ並みですね。
 近藤 いいえ、並みではなく、プロです。ギャラは高いですよ。高くしないと出演依頼がいっぱい来るんで、断る口実で高くしています。

 〜〜失礼しました。
 近藤 本も出していますよ。「奇術入門」(ひばり書房)、「奇術その魅力その世界」(朝倉出版)、「手品のタネ本」(角川出版)など。特に「手品のタネ本」は香港で海賊版が出ているくらいです。

 〜〜ますます失礼しました。本業のほうはどうですか?
 近藤 はい、よく聞いてくれました(笑)。2001年に「こだわりのオリジナル作品集『OUR BEST』(A4版、104ページ)、2004年「ブライダル勝ち組負け組とっておきの話」(A4版、62ページ)など、頑張っていますよ。



 

 
 

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